2025年保険業法改正について解説
- ほけんイージー編集部
- 6月6日
- 読了時間: 4分
更新日:5 日前

損害保険会社や保険代理店で不祥事が相次いだことを受け、2025年5月に改正保険業法が可決・成立しました。ビッグモーター事件等の不祥事を受けて、2024年9月から6回にわたり金融審議会のワーキンググループなどで議論され、今回の法改正へと至りました。
なぜ保険業法を改正することになったのか?
今回の保険業法改正の背景には、一連の損害保険業界で発生した不祥事案があります。代表的な事件としては下記のものがあげられます。
発生年月 | 事件の主体 | 事件の概要 |
2023年7月 | ビッグモーター | 必要のない修理を行うなど不正な保険金請求を組織的に行った。 |
2024年10月 | 大手損害保険会社 | 損保大手4社が、企業向けの共同保険契約で、保険料を事前調整した。 |
2024年11月 | FPパートナー | 比較推奨を怠り、便宜供与を受けた保険会社の商品を優先的に勧めた。 |
これらの事案は、業界の信頼を大きく揺るがすものであったため金融庁は再発防止に向けた抜本的な対策が必要と判断しました。改正は、顧客保護の強化と公正で透明性の高い市場環境の確立という、二つの主要な目的の下に進められました。
保険業法改正の中身とポイント
改正保険業法の主な内容は以下の通りです。
過度な便宜供与の禁止: 保険会社等が保険契約者や保険代理店に対して、不当な利益や便宜供与を行うことが禁止されます。これにより、保険商品の推奨における公平性が保たれます。
体制整備義務の強化: 損害保険代理店、特に自動車修理業などを兼業する大規模な乗合代理店に対して、顧客の利益が不当に害されないよう、適切な業務管理体制の整備が義務付けられます。具体的には、保険金支払管理部門と営業部門の分離、法令等遵守責任者の設置、苦情処理体制の整備などが求められます。生命保険代理店にも同様の措置が適用される予定です。
指導・監督の実効性確保: 損害保険会社が保険代理店に対して行う指導・監督の実効性を確保するための規定が強化されます。
代理店手数料算出方法の適正化: 代理店に支払われる手数料の算出方法がより公正かつ透明なものに見直されます。
情報管理体制の整備: 顧客情報管理の体制強化が図られ、情報漏洩や不正利用のリスク低減を目指します。
政策保有株式の縮減: 保険会社による政策保有株式の保有を縮減する方針が盛り込まれています。
保険仲立人の媒介手数料受領方法の見直し: 保険仲立人が媒介手数料を受け取る方法について見直しが行われます。
今回の改正によってどんな影響があるのか?
今回の改正保険業法は、保険業界全体に以下のような影響をもたらすと予想されます。
顧客保護の強化: 不正行為の再発防止策が強化されることで、保険契約者はより安心して保険商品を選択し、サービスを利用できるようになります。
業界の透明性向上: 代理店や保険会社の業務運営における透明性が高まり、健全な競争が促進されます。
業務運営の見直し: 保険会社や保険代理店は、新たな規制に準拠するため、内部管理体制や営業戦略の大幅な見直しが求められます。特に兼業を行う代理店は、より厳格な体制整備が必須となります。
継続的な監視: 金融庁は、今回の改正が十分な効果を発揮しない場合、5年を待たずにさらなる検討を行うとしており、保険業界に対する継続的な監視と改善が期待されます。
今回の改正は、もちろん顧客にとってはより安全に適切な保険を選択できるようになるメリットのある改正ですが、今までもまじめに募集活動を行ってきた代理店にとっては規制が厳しくなることでより一層業務が制限されることにもなります。
今回の改正の原因ともいえる不祥事件は大規模な代理店もしくは保険会社が関わっている非常に影響度の高いものですので、それを受けて締め付けがあるのはやむを得ないことですが、まじめにやっている代理店に報いる制度があってもいいのではないかとも思います。