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就業不能保険

三大疾病保険とは、日本人の死因トップ3を占める「がん(悪性新生物)・心疾患・脳血管疾患」、いわゆる三大疾病を保障する保険です。

​ 「もし明日、病気やケガで今の仕事を辞めざるを得なくなったら、あなたの生活はどうなりますか?」

現代の日本において、医療技術の進歩は「死ぬリスク」を減らしましたが、代わりに「働けない状態で生き続けるリスク」を増大させました。このリスクを補完するのが「就業不能保険」です。

就業不能保険とは? 「人生のバックアップ」としての仕組み

 

 ① 就業不能保険の定義と役割

 就業不能保険とは、病気やケガによって長期間仕事ができなくなった際、あらかじめ設定した月額給付金(例:毎月15万円)を、退職するであろう年齢(60歳や65歳など)まで受け取れる保険です。

 最大の特徴は、医療保険のような「一時的な費用の補填」ではなく、「毎月の給料(手取り収入)の補填」を目的としている点にあります。いわば「自分自身の収入にかけられる保険」です。

 ② 所得補償保険との違い(生保と損保の比較)

 よく混同される「所得補償保険」との違いを整理しましょう。

 長期的なライフプランを描く現役世代にとっては、60歳や65歳まで保障が固定される「就業不能保険」の方が、安心感の面で選ばれる傾向にあります。

どんな時に受け取れる?「就業不能状態」とは

 「働けない」という定義は、実は非常に複雑です。ここを理解していないと、いざという時に給付金が受け取れず後悔することになります。

① 支払対象となる「就業不能状態」の3大定義

 一般的に、以下のいずれかの状態に該当した場合に支払いが開始されます。

1. 入院状態
治療を目的として、病院や診療所に入院している状態。


2. 在宅療養状態(医師の指示)
入院はしていないが、病気やケガにより「軽作業を含め、いかなる業務にも従事できない」と医師が判断し、自宅等で治療に専念している状態。


3. 障害状態(公的基準との連動)
国民年金法に基づく「障害等級1級・2級」などに認定された状態。

 ② 「免責期間」という名のハードル

 就業不能保険には、必ず「免責期間」が設定されています。これは、働けなくなってから「給付金が支払われない待機期間」のことです。

 一般的な設定は60日や180日です。例えば免責60日の場合、就業不能期間が60日以下の場合受け取ることはできず、61日目から支払いが開始されます。つまり、2週間程度の短期入院では1円も受け取れません。

③ 近年のトレンド「精神疾患」の保障

 うつ病、適応障害、パニック障害などの精神疾患は、現代の就業不能理由のトップクラスです。

対象外の商品:身体的な病気やケガのみを対象とし、精神疾患は一切払わない。
対象となる商品(特約):精神疾患による就業不能も保障するが、「通算600日まで」や「支払回数に制限あり」など、身体疾患よりも保障が薄いケースが多い。

【プロのアドバイス】
最近では、精神疾患を身体疾患と同等に手厚く保障する商品も登場しています。IT業界や教育現場など、ストレスフルな環境に身を置く方は、この「精神疾患保障」の有無を最優先事項にすべきです。

なぜ「医療保険」だけでは不十分なのか?

 多くの人が「医療保険に入っているから大丈夫」と考えがちですが、これは非常に危険な誤解です。

① 医療保険は「支出」の補填、就業不能保険は「収入」の補填

 医療保険は、入院1日につき1万円、手術1回につき10万円といった形で、「治療費」をカバーします。しかし、最近の入院は短期化しており、入院給付金だけでは「家賃」や「子供の塾代」といった「収入を補う」ところまでは到底まかなえません。
 それに対して就業不能保険は入院していなくても、自宅で療養中(働けない状態)であれば、毎月定額が振り込まれます。これが「生活の維持」に直結します。

② 入院しなくても「働けない」ケースは多い

 例えば、重度の腰痛、ガンの通院治療、うつ病。これらは「入院」はしない(または短い)ものの、以前と同じように働くことは困難です。医療保険は「入院日数」に左右されますが、就業不能保険は「働けない期間」にフォーカスするため、在宅療養期間を広くカバーできます。

 職業別の必要性:あなたは本当に必要か?

 日本の公的保障(社会保険)は非常に優れていますが、職業によってその「穴」は大きく異なります。

① 自営業・フリーランス(個人事業主)

【必要度:★★★★★(極めて高い)】
・自営業者が加入する「国民健康保険」には、傷病手当金がありません。

・働けなくなった日 = 収入がゼロになる日
・障害状態になっても「障害基礎年金」のみ(会社員より受給額が大幅に少ない)

 

結論:最もリスクが高い層です。免責期間を最短(60日等)に設定し、月々の生活費を大部分カバーできるプランを検討したほうがいいでしょう。

② 会社員(正社員・公務員)

【必要度:★★★☆☆(貯蓄による)】
・会社員には「傷病手当金」がありますので、
給与の約3分の2が最大1年6ヶ月間支給されます。
・逆に言えば「収入が1/3減る」ということ。さらに1年6ヶ月を過ぎると支給が止まり、より基準の厳しい「障害年金」に移行します。


結論:「収入の1/3減」に耐えられる貯蓄がない人、または住宅ローン等の固定費が多い人は、1年6ヶ月以降を重点的にカバーする「ハーフタイプ(後述)」の検討が推奨されます。

③ 専業主婦・主夫

【必要度:★★☆☆☆】
・直接的な現金収入はありませんが、家事や育児を外注(ベビーシッターや家事代行)する場合、多額の費用がかかります。

結論:収入補填というよりは「家事代行費用の確保」として、少額(月10万円程度)の加入を検討する価値があります。

 

【重要】公的保障の具体的な受給額を知る

 保険を選ぶ前に、まずは「国からいくらもらえるか」を把握しましょう。これが就業不能保険の「設定金額」を決める基準になります。

 

1. 傷病手当金(会社員・公務員のみ)

 月収30万円の人なら、月額約20万円が支給されます。そのため不足額はおおよそ月10万円 + 社会保険料の自己負担分となります。

2. 障害年金(共通だが額が異なる)

障害基礎年金(1級・2級):自営業者などが対象。2級で年間約81.6万円(2024年度・子供の加算あり)。月額に直すと約6.8万円となります。


障害厚生年金:会社員が対象。基礎年金に上乗せして報酬比例部分が支給されるため、より手厚くなります。

失敗しない就業不能保険の選び方:5つのチェックポイント

① 給付金額の設定

 「今もらっている給料と同じ額」にする必要はありません。

(現在の支出)-(公的保障)= 就業不能保険の月額


この計算式で、必要最小限の金額に設定することで保険料を抑えられます。

 ② 免責期間の選択

60日:自営業、または貯蓄が非常に少ない会社員向け。
180日:傷病手当金や有給休暇がしっかりしている会社員向け。保険料は60日設定より格段に安くなります。

③ 「ハーフタイプ」か「定額タイプ」か

定額タイプ:期間中ずっと同じ金額を受け取る。
ハーフタイプ:最初の1年6ヶ月は給付金を半分にし、それ以降を全額にする。傷病手当金が出る会社員にとって、最もコストパフォーマンスが良い選択です。

④ 保障期間の終了時期

 60歳満了、65歳満了、70歳満了などが選べます。住宅ローンの完済時期や、公的年金の受給開始時期(原則65歳)に合わせるのがセオリーです。

⑤ 支払事由の広さ(ここが最重要!)

「就業不能状態」の基準が保険会社によって異なります。

A社:入院中、または医師の指示による在宅療養(厳しい)。
B社:障害年金の等級に連動(認定されれば確実だが、認定まで時間がかかる)。
C社:独自の身体的理由(最も支払われやすい可能性がある)。
約款を読み込み、どのような状態なら払われるのか、複数の商品を比較することが不可欠です。

実例シミュレーション:会社員Aさんの場合

属性:35歳、会社員(年収500万円)、妻と子1人、住宅ローンあり。
リスク:傷病手当金(月約22万円)は出るが、住宅ローンと教育費で月30万円の支出がある。月8万円の赤字。


申し込みプラン
就業不能保険:月額15万円
保障期間:65歳まで
免責期間:180日
タイプ:ハーフタイプ(最初の540日は月7.5万円、以降月15万円)


結果:保険料を月数千円に抑えつつ、傷病手当金がある期間の赤字を埋め、手当が切れた後の収入減を回避できる。

加入前に知っておくべきデメリットとリスク

 どんなに優れた保険にもデメリットはあります。

1. 「働ける」の判断が難しい
 「自分では働けない」と思っていても、保険会社の基準で「軽作業なら可能」と判断されると、給付金が止まる可能性があります。


2. 掛け捨てである
 就業不能保険のほとんどは掛け捨てです。何事もなく健康に現役を終えた場合、保険料は戻ってきません。


3. 審査(告知)が厳しい
 特に精神疾患の通院歴がある場合、加入が非常に難しくなります。「健康なうちに」検討すべき保険の筆頭です。

 

就業不能保険Q&A

Q1. 契約後に転職して自営業になったら?

多くの場合、契約は継続できます。ただし、会社員時代に「ハーフタイプ」で契約していた場合、自営業になると傷病手当金がないため、最初の1年6ヶ月の保障が不足する可能性があります。転職時は保障内容の見直しが必要です。

Q2. 給付金を受け取っている間に、保険料の支払いはどうなる?

 「保険料払込免除特約」が付いている場合、所定の就業不能状態に該当した後の保険料支払いが免除される商品が多いです。これは非常に大きなメリットです。

Q3. 海外で病気になった場合も対象?

 原則として、国内・海外問わず対象になりますが、診断書の提出(日本語訳が必要な場合あり)や確認作業に時間がかかることがあります。

就業不能保険の基礎知識

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