
医療保険
医療保険とは、公的医療保険だけではカバーしきれない医療費の負担を補うために、個人が任意で加入する保険です。
医療保険提案シミュレーター
医療保険の基礎知識
「医療保険は本当に必要なのか?」「どの保険に入ればいいのかわからない」多くの人が抱えるこの悩
みに対する答えは、実は「日本の公的医療保険制度(健康保険)」を正しく理解することにあります。
本記事では、公的制度でどこまで守られるのかをデータに基づいて解説し、その上で「本当に必要な民間医療保険」の選び方を徹底解説します。
1. 公的保険と民間保険の「2階建て」構造
日本における医療保険制度は、基本的に「公的医療保険(1階部分)」と「民間医療保険(2階部分)」の2階建て構造になっています。
公的医療保険(強制加入・現物給付)
日本は「国民皆保険制度」を採用しており、すべての国民がいずれかの公的医療保険に加入しています。
病気やケガをした際、病院の窓口で保険証を出せば、原則3割負担などで医療サービスそのものを受けられる「現物給付」が基本です。
民間医療保険(任意加入・現金給付)
公的保険の上乗せとして、自分自身の意思で加入する保険です。
最大の特徴は、所定の条件を満たした際に「現金(給付金)」を受け取れることです。公的保険ではカバーできない費用や、治療中の経済的リスクをカバーする役割を担います。
民間の医療保険にはどんな保障がある?
民間保険は商品によって保障内容をカスタマイズできますが、主に以下の3つの柱で成り立っています。
1. 入院給付金(ベースとなる保障)
病気やケガで入院した際、「1日につき5,000円」や「1日10,000円」などが支払われます。
-
日帰り入院から保障されるタイプが主流です。
-
入院日数に関わらず「一律10万円」などの一時金タイプも増えています。
-
用途: 差額ベッド代(個室代)、入院時の食事代、家族のお見舞い交通費、入院グッズの購入費など。
2. 手術給付金(治療費の補填)
所定の手術を受けた際に、「5万円」「10万円」「20万円」などの一時金が支払われます。
-
手術の種類や難易度(倍率)によって金額が変わるタイプと、一律の金額が支払われるタイプがあります。
3. 特約(オプションによるカスタマイズ)
主契約(入院・手術)に上乗せして、特定の不安に備えるものです。
-
先進医療特約: 重粒子線治療など、全額自己負担となる高額な先進医療費(技術料)を実費保障します(通算2,000万円までが一般的)。
-
三大疾病特約: がん・心疾患・脳血管疾患になった際に、まとまった一時金を受け取れます。
-
女性疾病特約: 乳がんや子宮筋腫など、女性特有の病気で入院・手術をした際に給付金が上乗せされます。
Point: なぜ民間保険が必要なのか?
公的保険は「治療費」を安くしてくれますが、「手元の現金を増やす」ことはしてくれません。一方で民間保険から受け取る給付金は使途が自由です。治療費以外にも、働けない期間の生活費の補填や、退院後の療養費、ウィッグ代、家事代行サービスの利用など、生活の質(QOL)を維持するために使えるのが最大のメリットです。
2. 公的な健康保険制度でどこまで保障されるか
多くの人が民間保険への加入を急ぐあまり、公的制度の「手厚い守り」を見落としがちです。ここでは厚生労働省のデータに基づき、公的保障の範囲を解説します。
(1) 療養の給付(窓口負担は1〜3割)
病院の窓口で支払う医療費は、年齢や所得に応じて以下のようになっています。
-
未就学児: 2割
-
義務教育就学後〜69歳: 3割
-
70歳〜74歳: 2割(現役並み所得者は3割)
-
75歳以上: 1割(一定以上の所得者は2割または3割)
(2) 高額療養費制度(医療費が高額になった時の守り)
これが最も重要な制度です。もし手術や長期入院で、1ヶ月の医療費が100万円かかったとしても、窓口で30万円(3割)を支払う必要は必ずしもありません。
「高額療養費制度」により、所得に応じた「自己負担限度額」を超えた分は払い戻されます(または事前申請で支払いを免除されます)。
【例:年収約370万〜770万円の方(69歳以下)の場合】
-
計算式: 80,100円 + (総医療費 − 267,000円) × 1%
-
実質負担額: 医療費が100万円かかっても、実際の自己負担は約8万7千円程度で済みます。
(3) 傷病手当金(働けない期間の収入保障)
会社員や公務員(健康保険加入者)の場合、病気やケガで連続して3日以上仕事を休み、給与が支払われない場合、4日目から給与の約3分の2が最長1年6ヶ月間支給されます。
※国民健康保険(自営業など)には基本的にこの制度はありません(新型コロナ等の特例を除く)。
公的保険の「死角」:カバーされない費用
一方で、以下の費用は公的保険の対象外となり、全額自己負担となります。民間保険は主にこれらに備えるために存在します。
-
差額ベッド代(個室代): 平均約8,000円/日(※個室などを希望した場合)
-
入院時の食事代: 1食460円(標準負担額)
-
先進医療の技術料: 数万円〜300万円程度(重粒子線治療など)
-
日用品・交通費・家族の宿泊費
3. 医療保険の賢い選び方
公的保障を踏まえた上で、自分に最適な民間医療保険を選ぶための手順とポイントを解説します。
① 「終身型」か「定期型」か
-
終身型: 保障が一生涯続き、保険料が加入時から上がりません。老後の保障を確保したい人向けで、現在の主流です。
-
定期型: 「10年」「60歳まで」など期間が決まっています。更新ごとに保険料が上がりますが、若いうちは割安です。子供が独立するまで手厚くしたい場合などに活用します。
② 入院給付金日額(1日あたりいくら必要か)
「1日5,000円」か「1日10,000円」かで迷うポイントです。
前述の「高額療養費制度」を使えば、医療費自体の自己負担は月8〜9万円程度に収まることが多いです。しかし、差額ベッド代や食事代、収入減を考慮すると、日額5,000円〜10,000円が一般的な目安となります。
-
自営業の方(傷病手当金がない):少し手厚く設定(10,000円など)
-
会社員の方・貯蓄がある方:最低限(5,000円)でも可
③ 手術給付金のタイプ
-
公的保険連動型: 公的医療保険の対象となる手術(約1,000種類)なら給付されるタイプ。現在はこれが主流で、請求漏れが起きにくく安心感があります。
-
約款所定型: 保険会社が決めた特定の手術(88種など)のみ対象。古い保険に多いため、見直しのポイントになります。
④ 先進医療特約はつけるべきか
「先進医療」は公的保険が効かず、全額自己負担となり高額になりがちです(例:がんの重粒子線治療は約300万円)。
先進医療特約は、月額100円〜数百円程度で通算2,000万円まで保障されるケースが多く、コストパフォーマンスが非常に高いため、付加することをおすすめします。
⑤ 保険料払込期間(いつまで払うか)
終身払い: 一生払い続けるタイプ。月々の保険料は安いですが、長生きするほど総支払額は増えます。
短期払い(60歳・65歳払済): 定年までに払い終えるタイプ。月々の保険料は高くなりますが、老後の固定費を下げられるメリットがあります。
4. 医療保険に関するよくあるご質問(FAQ)
Q1. 貯金があれば医療保険はいらないというのは本当ですか?
A1. 一理ありますが、リスクの種類によります。
数百万〜1千万円程度の十分な貯蓄があり、それを医療費に使っても教育資金や老後資金などの計画が崩れないのであれば、医療保険の必要性は低いです。しかし、「貯蓄を取り崩したくない」「がん治療などで長期化・高額化(数百万円単位)した場合に資産を守りたい」と考えるなら、掛け捨ての安い保険に入っておくのは有効な「資産防衛」になります。
Q2. 過去に病気をしていますが、入れますか?
A2. 「引受基準緩和型(限定告知型)」なら入れる可能性があります。
持病がある方でも、「過去3ヶ月以内に入院を勧められていない」「過去2年以内に入院・手術をしていない」などの簡単な条件(告知項目)を満たせば加入できる保険があります。ただし、通常の保険より保険料が割高になる傾向があります。
Q3. がん保険と医療保険、どちらを優先すべきですか?
A3. 予算が限られるなら「医療保険」+「がん特約」がバランスが良いです。
医療保険は病気・ケガ全般をカバーするため守備範囲が広いです。まずは医療保険でベースを作り、予算に余裕がある場合や、がん家系であるなど特定のリスクに備えたい場合に「がん保険」を検討するのが一般的です。
Q4. 若いうちに入ったほうが得ですか?
A4. 1回あたりの保険料は安くなりますが、総支払額は必ずしも安くなりません。
早く入れば月々の保険料は安いですが、払う期間が長くなります。ただし、「健康なうちに入る」という点では若いうちの加入が圧倒的に有利です。年齢が上がると病気のリスクが高まり、加入を断られたり、特定の部位が保障されないなどの条件がついたりすることがあるからです。