「保険会社向けの総合的な監督指針」の一部改正に備えて準備すべきこと
- ほけんイージー編集部

- 1月23日
- 読了時間: 4分

2025年末、金融庁より「保険会社向けの総合的な監督指針」の一部改正案が公表され、現在パブリックコメント(意見募集)が行われています(2026年1月30日締切予定)。 今回の改正は、ビッグモーター事件や大手損保のカルテル問題といった一連の不祥事を受けたものであり、保険代理店経営にとっては、過去数十年で最も大きな「ゲームチェンジ」となります。
本記事では、改正案のポイントと金融庁の狙い、そして6月の施行までに代理店が「具体的に何を準備すべきか」を解説します。
1. 現在パブコメ募集中の「監督指針」改正案の概要
今回の改正のキーワードは、「性善説からの脱却」と「ハードロー(法的義務)化」です。これまでの「保険会社の指導に任せる」という間接的な監督から、法令や指針によって代理店の規律を直接縛る方向へと大きく舵が切られました。
主な改正ポイントは以下の3点です。
特定大規模乗合保険募集人への直接規制
一定規模(手数料収入10億円以上等)の代理店に対し、法律上の「体制整備義務」が課されます。これには、営業所ごとの「法令等遵守責任者」の配置や、本社への「統括責任者」の設置が含まれます。
「過度な便宜供与」の禁止
保険会社から代理店への「過剰な接待」「本来自社でやるべき事務の代行(人的支援)」「実態のない広告料」などが、法令違反として明確に禁止されます。
兼業代理店(修理工場等)の利益相反管理
自動車修理と保険募集を兼業する場合、保険金を不当に請求しないよう、部門間の情報遮断や監視体制の構築が義務付けられます。
2. 金融庁は保険代理店に何を求めているか?
金融庁が求めているのは、一言で言えば「保険会社からの自立」です。
① 「もたれ合い」構造の完全な解消
これまで一部で見られた、「保険会社が代理店の事務を肩代わりする」「代理店は恩義のある保険会社の商品を優先的に売る」という持ちつ持たれつの関係(構造的な癒着)は、顧客利益を損なう主因とみなされました。 金融庁は、代理店が保険会社から独立した立場で、真に顧客のために行動できるガバナンス体制を求めています。
② 「ハ方式」の廃止と説明責任の厳格化
販売プロセスにおいては、いわゆる「ハ方式(詳細な意向把握をせず、代理店の推奨商品を提示する方法)」が廃止され、「ロ方式(顧客の意向を把握し、それに基づき商品を絞り込んで推奨する)」へ一本化される見通しです。 「手数料が高いから」「キャンペーン中だから」という理由は通用しなくなり、「なぜその商品を推奨したのか」を論理的に説明し、記録に残すことが求められます。
3. 具体的にどんな準備をしておくべきなのか?アクションプラン
2026年6月の法令施行、および4月から本格化する損保協会の「代理店業務品質評価制度」を見据え、直ちに着手すべき準備事項をまとめました。
【Action 1】「脱・保険会社依存」の業務フロー構築(~2026年3月)
「過度な便宜供与」の禁止により、これまで保険会社の社員(ソリシター)に頼っていた事務作業は、すべて自社で行う必要があります。
事務の棚卸し: 見積作成、申込書チェック、満期管理など、保険会社任せにしている業務を洗い出す。
自社リソースの確保: 上記業務を自社スタッフで回すための採用、またはITツールの導入を検討する。
社内規定の改定: 「保険会社からの過剰な接待を受けない」「業務代行を依頼しない」旨を社内コンプライアンス規定に明記する。
【Action 2】「ロ方式」に対応した商談記録システムの導入
「言った言わない」を防ぎ、金融庁検査に耐えうる証跡を残す必要があります。
意向把握の記録: 顧客の意向(予算、補償範囲)と、それに対する推奨理由がセットで記録できるCRMや商談記録システムを整備する。
比較推奨フローの標準化: 属人的な販売を禁止し、誰が担当しても同じ基準で商品比較が行われるようマニュアル化する。
【Action 3】組織体制の再編(特定大規模代理店は必須)
規模の大きい代理店(または今後拡大を目指す代理店)は、ガバナンス体制の強化が急務です。
責任者の人選: 全営業所に配置する「法令等遵守責任者」と、全社を統括する「統括責任者」の候補者を選定し、研修を開始する。
内部監査の準備: 形式的な自己点検ではなく、客観的な内部監査が実施できる体制(他部門によるチェック等)を整える。
【Action 4】手数料減少に備えた財務シミュレーション
新制度下では、業務品質が手数料ランクに直結します(日本損害保険協会の業務品質評価など)。また、事務負担増によるコストアップも予想されます。
収益予測: 「業務代行」という見えない補助金がなくなった状態で、現在の経営が成り立つか試算する。
品質評価対応: 損保協会の「自己点検チェックシート(2025年度版)」を活用し、現在の適合状況を確認・改善する。
まとめ:ピンチをチャンスに変えるために
今回の改正は、単なる規制強化ではなく、プロフェッショナルな代理店とそうでない代理店を選別する「淘汰の号砲」です。 準備にはコストと労力がかかりますが、これらにいち早く対応し、「透明性の高い推奨販売」と「自立した経営体制」をアピールできれば、顧客からの信頼を獲得し、競合他社に差をつける大きなチャンスとなります。
