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三大疾病保険

三大疾病保険とは、日本人の死因トップ3を占める「がん(悪性新生物)・心疾患・脳血管疾患」、いわゆる三大疾病を保障する保険です。

 「医療保険に入っているから、もし大きな病気になっても大丈夫」そう考えている方は多いかもしれません。しかし、日本人の死因トップ3を占める「がん(悪性新生物)・心疾患・脳血管疾患」、いわゆる三大疾病にかかったとき、本当に怖いのは「治療費」だけではありません。

 治療が長期に及んだり、後遺症が残ったりした際の「収入の減少」や、公的保険がきかない「生活上の出費」。これらが家計をじわじわと圧迫し、ライフプランを狂わせてしまうのです。この記事では、そんなリスクに備えるための「三大疾病保険(特定疾病保険)」について解説します。

 医療保険やがん保険との決定的な違いから、商品によって大きな差が出る「支払い条件」のチェックポイントまで、後悔しないための知識を網羅しました。

そもそも「三大疾病保険(特定疾病保険)」とは?

 まずは、この保険がどのようなものか、基本的な仕組みと役割を整理しましょう。

◆三大疾病保険とは

 三大疾病保険とは、日本人が最もかかりやすい以下の3つの病気に特化して手厚い保障を用意する保険です。保険会社によっては「特定疾病保険」や「特定疾病保障保険」と呼ばれることもありますが、基本的な対象は同じです。

  1. がん(悪性新生物)

  2. 心疾患(急性心筋梗塞など)

  3. 脳血管疾患(脳卒中など)

 これら3つの病気は、日本人の死因の約50%を占めると言われています。誰にとっても「自分ごと」として考えなければならない病気です。

 

◆どのような時にお金がもらえるのか?

かつては死亡保障の前払い的な意味合いが強い商品もありましたが、現在主流となっているのは「生きて治療するための資金」を提供するタイプです。

  • 一時金タイプ(主流):

    「がんと診断された」「心疾患で入院した」などの条件を満たした時点で、50万円、100万円、200万円といったまとまったお金(一時金)が一括で支払われます。

  • 年金タイプ:

    「就労不能状態が続いた場合」などに、毎月10万円などを年金形式で受け取ります。

◆なぜ「三大疾病」だけ特別扱いするのか?

 「普通の医療保険でも、入院すればお金が出るのでは?」と疑問に思うかもしれません。しかし、三大疾病には他の病気やケガとは異なる厄介な特徴があります。

  1. 治療が長期化・高額化しやすい

    抗がん剤治療や、脳卒中後のリハビリテーションなど、治療が数ヶ月〜数年に及ぶケースが珍しくありません。

  2. 再発のリスクがある

    一度治ったと思っても再発・転移したり、脳梗塞を繰り返したりと、一度きりの治療で終わらない怖さがあります。

  3. 「働けなくなる」リスクが高い

    命は助かっても、体に麻痺が残ったり、定期的な通院が必要でフルタイム勤務ができなくなったりと、収入に直結するダメージを受けやすい病気です。

 三大疾病保険は、こうした「人生を変えてしまうほどのリスク」に対して、経済的な防波堤を作るための保険なのです。

【データで見る】三大疾病保険は本当に必要か?

 「保険は確率の低い不幸にかけるギャンブルだ」という意見もありますが、三大疾病に関しては「確率」も「影響度」も桁違いです。データを紐解きながら、その必要性を検証します。

1. 誰もが避けて通れない「罹患率」の高さ

 国立がん研究センターなどのデータによると、日本人が一生のうちにがんと診断される確率は、男性で約65%(3人に2人)、女性で約50%(2人に1人)です。

 心疾患や脳血管疾患を含めれば、生涯でいずれかの病気にかかる可能性はさらに跳ね上がります。もはや「運が悪ければなる」病気ではなく、「長生きすれば多くの人が直面する病気」と言えます。

2. 「医療費」以外の隠れたコスト

 高額療養費制度があるため、公的保険適用の治療であれば、月々の自己負担額は一般的な所得の方で8万円〜10万円程度に抑えられます。

 「貯金が100万円あれば保険はいらない」と言われる根拠はここにあります。しかし、三大疾病の闘病において、本当にお金がかかるのは「公的保険の対象外」の部分です。

  • 差額ベッド代:

    脳卒中などで重篤な状態の時や、免疫力が落ちているがん治療中など、個室を選ばざるを得ないケースがあります。1日1万円としても、1ヶ月で30万円かかります。

  • 先進医療・自由診療:

    陽子線治療や重粒子線治療など、数百万円単位の費用がかかる治療法を選びたい場合、全額自己負担となります。

  • 通院交通費・宿泊費:

    専門の名医がいる遠方の病院へ通うための交通費や、付き添う家族の宿泊費がかさみます。

  • ウィッグ・補整具:

    抗がん剤治療による脱毛への対策や、乳がん手術後の下着など、QOL(生活の質)を維持するための出費も馬鹿になりません。

3. 最大のリスクは「収入の減少」

 最も深刻なのが、治療と仕事の両立です。近年の医療は「入院を短く、通院を長く」という傾向にあります。入院していれば傷病手当金などの対象になりやすいですが、退院して「自宅療養しながら通院治療」をする期間は、制度の狭間に落ちやすいのです。

  • 抗がん剤の副作用で体調が優れず、残業ができなくなった。

  • リハビリのため週に数回半休を取る必要があり、パートにならざるを得なくなった。

  • 脳梗塞の後遺症で、以前と同じ業務がこなせなくなった。

 このように収入が減る一方で、治療費や生活費は出ていきます。この「収入減と支出増のダブルパンチ」を埋めるために、使い道が自由な「一時金」が大きな役割を果たします。

よくある勘違い!「医療保険・がん保険・三大疾病保険」の違い

 保険選びで最も混乱しやすいのが、これら3つの保険の役割分担です。

「医療保険に入っていれば、特約でなんとかなる?」

「がん保険と三大疾病保険、どっちが良いの?」

 それぞれの違いを明確にするため、3つの保険を横並びで比較しました。

◆3つの保険の違いと役割

​​◆どう使い分けるのが正解か?

1. 医療保険は「守りのベース」

 これは「入院1日1万円」など、実費を補填するためのものです。どんな病気になっても最低限の対応ができるよう、まずはこれを確保します。

2. がん保険は「一点突破の強化」

 「うちはがん家系だから、がんだけは絶対に手厚くしたい」という場合は、がん保険の上乗せが有効です。特に「通院」や「抗がん剤」への保障は、三大疾病保険よりもがん保険の方がきめ細かいケースが多いです。

3. 三大疾病保険は「人生の防波堤」

 三大疾病保険の最大の特徴は、「原因を問わず、大きな病気になった瞬間に数百万円単位の現金が手元に来る」点にあります。医療保険では賄えない「半年分の生活費」や「住宅ローンの繰り上げ返済」、「リフォーム費用(バリアフリー化)」などに使えるお金です。

 「がんだけでなく、脳卒中で倒れて働けなくなるリスクも怖い」と考える方にとっては、がん保険よりも三大疾病保険の方がカバー範囲が広く安心です。

◆後悔しないために!選び方の重要3ポイント

 「三大疾病保険に入ろう」と決めたとしても、どの商品を選ぶかで、いざという時の役に立ち具合が全く違います。

 

 実は、三大疾病保険は商品ごとの「条件の差」が非常に激しい保険です。保険料の安さだけで選ぶと、「病気になったのにお金が出ない!」という最悪の事態になりかねません。必ず以下の3点をチェックしてください。

ポイント①:「範囲」の広さを確認する(最重要)

 パンフレットに「心疾患」「脳血管疾患」と書いてあっても、約款(詳細なルール)を見ると対象が限定されていることがあります。

心疾患の範囲
  • × 古いタイプ・条件が厳しいタイプ:

    「急性心筋梗塞」のみが対象。

    (※狭心症や心不全、不整脈などは対象外)

  • ○ 新しいタイプ・条件が良いタイプ:

    「心疾患」全体が対象。

    (※心不全などの幅広い心臓病がカバーされる)

 心疾患の中で「急性心筋梗塞」が占める割合は決して多くありません。心不全などで入院するケースも多いため、必ず「心疾患」全体をカバーしている商品を選びましょう。

脳血管疾患の範囲
  • × 古いタイプ・条件が厳しいタイプ:

    「脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)」のみが対象。

  • ○ 新しいタイプ・条件が良いタイプ:

    「脳血管疾患」全体が対象。

    (※脳動脈瘤やもやもや病なども含まれる)

 ここも同様に、範囲が広い「脳血管疾患」タイプがおすすめです。

ポイント②:「支払い条件」のハードルを確認する

 ここが最大の落とし穴です。「どのような状態になったらお金が出るか」を確認してください。

がん(悪性新生物)の場合
  • 要チェック: 「上皮内新生物(初期のがん)」でも満額出るか?

    商品によっては「上皮内新生物は対象外」あるいは「給付金が10%(100万円なら10万円)」となるものがあります。最近は初期のがんでも満額出るタイプが増えているので、そちらを選びましょう。

  • 支払いタイミング:

    ほとんどが「診断確定」で支払われますが、一部「入院が必要」な商品もあります。通院だけで治療が終わるケースもあるため、「診断確定」だけで出るものがベストです。

心疾患・脳血管疾患の場合

 ここが最も差が出ます。大きく分けて3つのパターンがあります。

  1. 【ハードル高】「60日ルール」タイプ

    「労働の制限が必要な状態が60日以上継続したと医師に診断されたとき」

    → これは非常に厳しい条件です。最近の医療は入院期間が短縮化されており、60日も労働制限が続く状態というのはかなり重篤です。軽度な脳梗塞で2週間で退院し、リハビリに通いながら復帰したような場合は、1円ももらえません

  2. 【ハードル中】「手術」または「入院」タイプ

    「治療のための手術を受けた」または「入院を開始した」とき。

    → これなら短期入院でも受け取れるため、かなり安心です。

  3. 【ハードル低】「1日以上の入院」タイプ

    「治療を目的として1日以上入院したとき」

    → 即座に受け取れるため、最も使い勝手が良いですが、保険料は高めになります。

 結論として、「60日ルール」がある商品は避けるのが無難です。

いざという時に「条件に足りないので払えません」と言われないよう、「入院したら即支払い」または「手術を受けたら支払い」という条件の商品を選びましょう。

ポイント③:「複数回」もらえるか確認する

 三大疾病は再発しやすい病気です。一時金を「1回もらって契約終了」というタイプと、「1年に1回を限度に、回数無制限」で受け取れるタイプがあります。

  • 1回タイプ: 保険料は安い。一度がんになれば保障はなくなり、その後再発してもお金は出ない。

  • 複数回タイプ: 保険料は高い。がんが再発したり、数年後に脳卒中になったりしても、都度お金が受け取れる。

 人生100年時代、一度の大病を乗り越えて長く生きることを考えると、「複数回」受け取れるタイプが安心です。ただし、2回目以降の受け取り条件(例:1年以上あける必要があるなど)もしっかり確認しましょう。

【ケース別】三大疾病保険に入るべき人・入らなくてもいい人

 ここまでの内容を踏まえ、三大疾病保険への加入を検討すべき人と、そうでない人を整理しました。ご自身の状況と照らし合わせてみてください。

◆三大疾病保険に入るべき人(必要性が高い人)

1. 自営業・フリーランスの方

会社員のような「傷病手当金(給料の約2/3が1年半出る制度)」がありません。病気で働けなくなった瞬間から収入がゼロになるリスクがあるため、生活費確保のために一時金タイプの保険は必須級です。

2. 住宅ローンを抱えている人

団信(団体信用生命保険)に入っていると思いますが、「死亡したらローンがゼロ」になる一般団信だけではありませんか?

「がんになっても、生きていればローン返済は続く」という状態は非常に危険です。団信に三大疾病特約を付けていない場合は、民間の保険で数百万円の一時金を用意し、それを返済に充てる計画を立てるべきです。

3. 貯蓄が少ない、または貯蓄を取り崩したくない人

「病気になったら貯金を使えばいい」と思っていても、教育費や老後資金として貯めていたお金を治療費に回すのは精神的苦痛が大きいです。

「貯蓄を守るための保険」として加入する価値があります。

4. 家族にがん、脳卒中、心臓病の経験者が多い人

遺伝的な要因や生活習慣の類似により、リスクが高い可能性があります。精神的な安心材料としても有効です。

◆三大疾病保険に入らなくてもいい人(優先度が低い人)

1. 十分な流動資産がある人

 いつでも使える預貯金が数百万〜1,000万円以上あり、もし治療で数百万円かかっても生活が揺るがない人は、保険で備える必要性は低いです。

2. 福利厚生が手厚い大企業の会社員・公務員

 会社独自の付加給付があり、医療費の自己負担が月2万円程度で済んだり、休職中も給与に近い金額が補償されたりする場合、過度な保険は不要かもしれません。

3. すでに手厚い団信に加入している人

 住宅ローンを組む際に、「がん診断で残債ゼロ」「三大疾病で残債ゼロ」といった強力な団信に入っている場合、それが保険の代わりになります(住居費負担がなくなるため)。

◆まとめ:自分の「リスク許容度」に合わせて賢い選択を

三大疾病保険は、かつてのような「死亡保障のおまけ」ではなく、医療技術が進歩した現代だからこそ必要な「生存給付(生きるためのお金)」としての価値が高まっています。

医療保険が入院費の「実費」を埋めるものだとすれば、三大疾病保険は「生活の質の維持」と「治療の選択肢」を買うためのものです。

【今回の重要ポイントのおさらい】

  1. 医療保険とは役割が違う: 治療費だけでなく、収入減や生活費をカバーするための「まとまったお金」を用意するもの。

  2. 範囲が重要: 「急性心筋梗塞」ではなく「心疾患」、「脳卒中」ではなく「脳血管疾患」を選ぼう。

  3. 条件に注意: 「60日以上の労働制限」などの厳しい条件は避け、「入院・手術」で出るタイプを選ぼう。

 三大疾病保険は、商品の中身が複雑で、一般の方には「どれが良い条件なのか」が見分けにくい分野でもあります。

 「保険料が安いから」という理由だけでネット申し込みをして、後で「対象外だった」と後悔することのないよう、加入前には必ずプロのFP(ファイナンシャルプランナー)などに相談し、複数の商品の「支払い要件の比較」をしてもらうことを強くおすすめします。

三大疾病保険の基礎知識

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