12/17公表「保険会社向けの総合的な監督指針」等の一部改正(案)について解説
- ほけんイージー編集部

- 2025年12月28日
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更新日:6 日前

12月17日に金融庁から「保険会社向けの総合的な監督指針(新旧対照表)(案)」が公表されました。この案は1月30日までのパブリックコメント募集を経て公布、施行の予定です。
この改正案は、近年の「ビッグモーター事件などの不祥事」や「顧客本位の業務運営(フィデューシャリー・デューティー)の徹底」を背景に、乗合代理店(複数の保険会社の商品を扱う代理店)に対する規制を大幅に強化する内容となっています。
以下に内容の要約と、保険代理店への具体的な影響を考察します。
1. 改正内容の要約(主な変更点)
今回の改正で特に重要なポイントは、「比較推奨販売の厳格化(ハ方式の廃止)」と「特定大規模代理店へのガバナンス強化」の2点です。
① 比較推奨販売ルールの抜本的見直し(「ハ方式」の廃止)
これまで乗合代理店が顧客に商品提案をする際、以下の3つの方法(イ・ロ・ハ)が認められていましたが、「ハ」が完全に廃止され、「ロ」に一本化される方向性が示されています。
【廃止】旧「ハ」方式: 代理店の独自の基準(経営方針、手数料の多寡、保険会社との資本関係など)で推奨商品を絞り込み、提示する方法。
【一本化】「ロ」方式: 顧客の意向に基づき、比較可能な商品を絞り込み、その中から提示・推奨する方法。
これにより、「当店の推奨商品はこちらです(※実は手数料が高いから)」という売り方が事実上禁止され、必ず「顧客の意向」を起点とした絞り込みプロセスを経ることが義務付けられます。
② 特定大規模乗合代理店等に対する体制整備の強化
ビッグモーター問題等を踏まえ、規模の大きい代理店(特定大規模乗合代理店)や兼業代理店に対する管理監督が強化されます。
法令等遵守責任者の設置義務化: 営業所や事務所ごとに、法令遵守を管理する責任者を置くことが求められます。
統括責任者の設置: 本店に、各拠点の責任者を指揮する統括者を置く必要があります。
③ 特別利益の提供禁止に関する明確化
「保険契約に付帯されるサービス(ロードサービス等)」や「事故防止・損害抑制サービス(ロスプリベンション)」については、過度な便宜供与(特別利益)には当たらない範囲が明確化されました。
2. 保険代理店に対する影響の考察
この改正は、特に複数の保険会社を扱う「乗合代理店」にとって、業務フローの根幹に関わる大きな影響を与えます。
① 営業プロセスの修正とシステム改修の負担増
影響: これまで「当社のおすすめ」として特定商品を優先的に販売していた代理店は、その根拠が「顧客の意向」と合致していることを客観的に証明できなければならなくなります。
対策: 顧客の意向把握(アンケートやヒアリング)を最初に行い、その条件で絞り込まれた結果を提示するというプロセスを徹底するため、意向把握システム(比較推奨システム)の改修や営業トークスクリプトの全面刷新が必要になります。
② 手数料重視の販売戦略の転換
影響: 保険会社からの手数料率が高い商品や、キャンペーン対象商品を代理店都合で推奨することが困難になります。「なぜその商品を推奨したのか」という理由について、これまで以上に合理的かつ顧客本位な説明が求められます。
リスク: 無理な誘導を行うと、監督指針違反として行政処分の対象となるリスクが高まります。
③ コンプライアンスコストの増大(特に大規模代理店)
影響: 多くの店舗を持つ大規模代理店(来店型ショップや自動車ディーラー等)では、各拠点に「法令等遵守責任者」を配置し、実効性のある管理を行う必要があります。
コスト: 資格取得支援や専任担当者の配置、研修の実施など、人的・金銭的コストが大きく増加します。
④ 保険会社による監査・管理の厳格化
影響: 保険会社側も代理店管理責任を問われるため、代理店に対する監査が非常に厳しくなります。
リスク: 適切な体制整備ができていない代理店は、保険会社から委託契約を解除されたり、乗合数を減らされたりする(選別される)可能性があります。
3. まとめ
今回の改正案は、代理店に対して「単なる販売者(セラー)」から「真の購買代理人(バイヤー)」への脱皮を迫るものです。「代理店の都合」ではなく「顧客の意向」が全てにおいて優先される業務プロセスへ、早急に移行する準備が必要です。

