生命保険文化センター「2025(令和7)年度 生活保障に関する調査(速報版)」の内容まとめ
- ほけんイージー編集部

- 2025年10月31日
- 読了時間: 7分
更新日:2025年12月29日

生命保険加入の普及状況と経済的負担
1. 高水準を維持する生命保険の加入率
生命保険(生命共済を含む。個人年金保険、グループ保険、財形を除く)の加入率(被保険者ベース)は、全生保ベースで80.0%に達しており、極めて高い水準を維持しています。個人年金保険を含めた総合的な加入率は81.5%となっており、日本の世帯にとって、生命保険が公的保障を補完する「自助努力の柱」として不可欠な存在であることを改めて示しています。特に女性の加入率は82.1%と、男性の78.8%を上回っており、性別を問わず広範に普及しています。

2. 年間払込保険料と一時払保険料の動向
生命保険・個人年金保険の加入者が支払う年間払込保険料(一時払を除く)の平均は、全体で17.1万円となっています。これを月額に換算すると約14,250円となり、各世帯が生活費の中から少なくない金額を保障の維持に充てていることが分かります。 一方、保険料の一時払を選択している人々の平均払込額は442.5万円と高額であり、これは主に貯蓄性や資産形成に重きを置いた商品、あるいは早期に保険料の支払いを完了させたいというニーズを反映していると考えられます。一時払保険は、比較的余裕のある資金をリスクに備えながら運用・保全する目的で利用されている傾向が読み取れます。
また、外貨建て保険の加入率は1.9%に留まっています。これは、円建て商品が主流であること、および為替リスクを伴う外貨建て商品に対する一般的な警戒感や知識不足が背景にあると推測されます。
3. 保険に関する知識の自己評価と課題
生活保障の中核をなす生命保険であるにもかかわらず、保険に関して「詳しい」(「かなり詳しい」+「少し詳しい」)と自己評価する人はわずか10.1%に留まっています。対照的に、「詳しくない」(「あまり詳しくない」+「全く詳しくない」)と回答した人は70.9%と大多数を占めており、これは保険商品の複雑化や多様化が進む中で、消費者が自身の加入内容や保障の仕組みを十分に理解できていないという深刻な課題を示唆しています。

この知識のギャップは、適切な保障選択の妨げとなり、後述する販売チャネルにおける専門家への高い依存度にも影響を与えていると考えられます。
保障内容別に見る生命保険の役割と加入状況
1. 医療保障:最も準備が進む領域
医療保障(ケガや病気による経済的リスクへの備え)は、自助努力による経済的準備の割合が83.9%と最も高い領域です。その準備手段として生命保険が70.2%とトップであり、公的医療保険制度を補完する役割を強く担っています。
入院時の医療費等への備えとして必要と考える疾病入院給付金の日額平均は10,100円です。これに対し、実際に加入している給付金日額の平均は8,500円であり、必要額に対する加入額の充足割合は約84.2%となっています。この数値は、他の保障領域と比較して比較的高い充足度を示していますが、依然として1,600円のギャップが存在し、自己負担分や差額ベッド代、生活費の補填分を完全にカバーできていない可能性があります。
2. 死亡保障:必要額との大きな隔たり
自分が万一死亡した場合の遺族の生活資金への備えを「準備している」人は74.8%で、具体的な準備手段としては生命保険が60.2%と、預貯金(44.1%)を抑えて最も利用されています。
遺族の生活資金の備えとして必要と考える死亡保険金の必要額は、平均で1,569万円です。これに対し、生命保険加入者が病気により亡くなった際に支払われる普通死亡保険金額の平均は、全体で887万円に留まっています。加入額は必要額の約56.5%しか満たしておらず、約682万円という大きなギャップがあります。この差は、公的遺族年金や退職金、預貯金などでカバーされることを期待している側面もありますが、特に子どもの教育費や住宅ローンといった生活上の重い負担を考慮すると、自助努力による準備水準が十分ではない可能性を示唆しています。
3. 介護保障:最も準備が進んでいない領域
介護保障は、四つの保障領域の中で自助努力による準備の割合が最も低い57.3%に留まっています。国民の「自分の介護に対する不安」が89.3%と最も高い不安意識を示しているにもかかわらず、この分野への準備が遅れていることは、深刻な課題です。
介護のための私的準備手段として生命保険を利用している人は28.4%に過ぎません。また、公的保障や企業保障を含めた生活保障全体に対する「充足感なし」の割合は、介護保障が70.8%と老後保障(67.2%)と並んで非常に高くなっています。
これは、公的介護保険制度への依存度が高く、私的保険や預貯金による経済的な備えが、介護費用が長期化・高額化するリスクに見合っていないと感じている人が多数派であることを示しています。民間の介護保険・介護特約の加入率も10.4%と、依然として低い水準にあります。
保険商品に安定性を求める傾向
今後の生命保険商品に対する消費者の意向は、「安定性」を強く求める傾向にあります。保険金額があらかじめ一定額に定められた定額型商品志向は78.3%と圧倒的多数を占めています。一方で、運用実績により保険金額が増減する変額型商品志向は10.6%に留まっています。
この結果は、生命保険に求める機能として、複雑な運用リスクを負って高いリターンを目指すよりも、「万一の際に確実に定まった額の保障を受け取りたい」という、保障本来の機能であるリスクヘッジと安定性を最優先する国民の意識を反映しています。
加入・検討に利用したチャネルの現状と対面志向
本調査で特に注目すべきは、生命保険の加入・検討に利用したチャネルに関する結果です。デジタル化が進む現代においても、生命保険という複雑で長期にわたる契約においては、「人」による対面でのコミュニケーションと専門知識が強く求められている実態が明らかになりました。
1. 加入方法に対する意向
加入方法(対面・非対面)に対する意向を尋ねたところ、「自宅や職場、窓口で営業担当者に直接会って加入したい」と回答した人が60.6%に達しました。これは、非対面での加入(インターネットや電話など)を望む人を大きく上回っており、消費者が保険の検討において、以下のような対面チャネルのメリットを重視していることを示しています。
専門家による個別相談: 個々人のライフステージや資産状況に合わせた複雑な保障設計について、専門的な知識を持つ担当者から直接説明を受け、質問や疑問点を解消したいというニーズ。
信頼性・安心感: 長期契約である生命保険において、直接会って担当者の人柄や企業の信頼性を確認したいという、情緒的な安心感の獲得。
契約手続きの複雑性: 保険契約の手続きや重要事項の説明を、専門家のサポートを受けながら確実に行いたいという実務的なニーズ。
具体的な販売チャネルの中で、「最も加入意向のあるチャネル」としては、「営業職員」が35.6%で最も高い割合を占めました。これに「保険代理店」や「銀行窓口」といった対面チャネルが続くと推測されますが、営業職員が依然として最大のチャネルとして選ばれている事実は、生命保険会社が直接抱える専門販売員が、消費者の信頼と加入ニーズに最も応えていることを示しています。
この高い対面・営業職員志向は、前述の「保険に関する知識の自己評価が低い(70.9%が詳しくない)」という課題の裏返しとも言えます。すなわち、保険の知識に自信がないからこそ、複雑な商品を分かりやすく説明し、最適な提案をしてくれる専門家への依存度が高くなっていると解釈できるでしょう。
今後の生命保険市場の方向性
2025年速報版の調査結果は、日本の生活保障における生命保険の役割を再確認させるとともに、いくつかの明確な課題と消費者ニーズを提示しています。
保障ギャップの是正: 死亡保障(充足度56.5%)と介護保障(準備率57.3%)は、不安が高いにもかかわらず、公的制度への依存度が高く、私的準備が最も不足している領域であり、今後の保障拡充が求められます。
知識格差の解消: 7割を超える「詳しくない」層に対する、より分かりやすい商品設計と情報提供が不可欠です。
対面チャネルの重要性: デジタル化が進む中でも、生命保険の加入においては「営業職員に直接会って加入したい」という対面志向(60.6%)が圧倒的であり、専門的なコンサルティングと信頼性の提供が、引き続き保険販売の鍵となることが示されています。
これらの結果から、生命保険業界は今後、デジタル技術を活用しつつも、営業職員や代理店といった対面チャネルのコンサルティング品質をさらに高め、「安定」を求める消費者のニーズに応えるシンプルで信頼性の高い商品を提供し続けることが重要になると言えるでしょう。
▼出典
生命保険文化センター「2025(令和7)年度 生活保障に関する調査(速報版)」


