【2026年8月最新】金融庁パブコメ公表!「ハ方式」廃止に向けて保険代理店が取るべき実務対応まとめ
- ほけんイージー編集部

- 5 時間前
- 読了時間: 7分

2026年8月28日、金融庁より保険業法における「比較推奨販売」に関するパブリックコメント(パブコメ)の結果が公表されました。
今回の発表で保険代理店にとって最も大きなインパクトとなるのが、代理店独自の推奨基準による商品提示、いわゆる「ハ方式」の事実上の廃止と、顧客の意向に基づく「ロ方式」への厳格な移行です。
本記事では、この大きなルール変更に対し、保険募集人や代理店が直ちに取り組むべき実務対応を「商品整理・提案実務・証跡管理」という連続する3つのステップに分けて解説します。また、コンプライアンス遵守に欠かせない「システム導入」の注意点もまとめました。
ステップ1:取扱保険会社・取扱保険商品の整理とマトリックス作成
「ロ方式」での比較推奨を正しく行うための第一歩は、自社が取り扱う保険商品のラインナップを正確に把握し、整理することです。
従来のように「代理店が売りたい商品(ハ方式)」を前提とするのではなく、「顧客の最善の利益にかなう商品選定」ができる土台を作る必要があります。
①取扱保険会社と取扱い保険商品の洗い出し
まずは、自社が委託契約を結んでいる保険会社のリストアップ、そしてその保険会社が販売している保険商品の洗い出しが必要です。今回のパブコメでは、覚書等で販売しない旨を取り交わさない限り、委託契約している保険会社の販売している保険商品は全て比較推奨の対象となります。
「普段はほとんど取り扱わないが実は保険会社が販売している商品」がないか厳密にリストアップしましょう。
このリストが今後の保険募集の出発点となります。
②リストアップした保険商品と「顧客の意向の種類」でマトリックス作成
今回のパブコメでは、意向把握項目と比較軸の対応関係をあらかじめ整理し、そのロジックに基づいて比較対象商品を選別する仕組みについて、「比較推奨販売の適切な実施、募集品質の確保及び管理態勢の高度化に資する取組の一つとなり得る」と明言されています。属人的な感覚に頼らず、募集人間・店舗間の説明のばらつきを抑える効果があるためです。
また「事後的に確認・検証できる記録」を残す上で、意向項目×商品の対応関係をあらかじめ整理しておくことは、説明の一貫性と検証可能性を高めます。
注意すべき点としては、代理店が独自の判断のみで「推奨保険会社群」をあらかじめ設定し、それ以外を比較推奨の対象外にする運用は明確に不適切とされています。マトリックスは「顧客の答えに応じて機械的に絞り込む」ためのものではなく、あくまで説明を整理・準備するための補助ツールという位置づけにする必要があります。
マトリックスによる機械的な絞り込みだけで終わらせず、実際の商談では「あなたの〇〇という意向に対して、この商品は△△という点で合致する」という個別の言語化が最終的に必要です。マトリックスはあくまで準備段階のツールであり、説明義務そのものを代替するものではありません。
これら整理を行うことで、次に行う「意向把握」の際に、顧客のニーズに対してどの商品をピックアップして比較すべきかという「選定ロジック」が明確になります。
また、このマトリックスは取扱保険会社を整理するうえでも役立ちます。今後は、取扱い保険会社が多ければ多いほど比較推奨対象の商品も増え、提案業務の難易度が増します。マトリックス表でカバーできる顧客意向を考慮しつつ、取扱件数が少ない保険会社委託契約を解除する等の判断も必要になってきます。
ステップ2:恣意性を排除した意向把握と商品提案
商品の整理ができたら、実際の商談における「意向把握」のプロセスを見直します。今回のパブコメでも厳しく指摘されたのが「意図的な誘導(潜脱行為)の排除」です。
「おすすめを教えて」と言われた場合の正しい対応
現場で最も多い「よくわからないからお任せする」「おすすめを教えて」という顧客に対し、「では、おすすめを希望するということでよろしいですね?」と強引に推奨理由を形成するトークスクリプトは明確なNG(潜脱行為)となります。
明確な意向がない顧客に対しては、以下のプロセスで意向を一緒に形成していくステップが求められます。
【NGトークとOKトークの比較】
顧客の反応 | 従来のNGトーク(誘導) | 今後のOKトーク(意向形成) |
「よくわからないから、おすすめを教えてよ」 | 「承知しました。では、当店一番人気のおすすめ商品をご案内しますね。」 | 「保険は目的によって最適なものが異なります。まずは〇〇様のご家族構成や、休業時の貯蓄の状況などをお伺いし、一緒に必要な保障を考えていきましょう。」 |
「(比較表を見て)どれがいいか決めてほしい」 | 「私としては、こちらのA社が絶対におすすめです!」 | 「それぞれの特徴を整理します。保険料を抑えたいならA社、一時金の手厚さを重視するならB社です。〇〇様はどちらを優先されたいですか?」 |
このように、「顧客の属性」や「加入目的」をヒアリングし、複数の選択肢を客観的に提示した上で、最終的な選択の決定権を必ず顧客に持たせることが重要です。
ステップ3:適切性を証明するための「証跡の残し方」
ステップ1で商品を整理し、ステップ2で正しく意向把握を行ったとしても、それが記録として残っていなければ、金融庁のモニタリングや内部監査で「適切に募集が行われたか」を証明できません。
「理由の言語化」が証跡の命
証跡として残すべき最も重要な項目は、「なぜその商品を推奨し、なぜ顧客はその商品を選んだのか」という理由の言語化です。定型文のチェックマークだけでなく、具体的なプロセスをテキストで残す必要があります。
【良い証跡の記載例】
「お客様は当初『おすすめを知りたい』との事だったが、ヒアリングの結果、現在共働きで子供が小さいため、万が一の際の『毎月の生活費の確保』が最優先課題であると意向を形成した。そのため、収入保障保険を比較推奨の対象とした。非喫煙者であるため、健康体割引が適用されるA社とB社の2商品を提示。比較の結果、お客様より『保険料がより安く、就労不能特約が付加できるA社が良い』との意向が示されたため、A社商品を最終推奨し、ご契約に至った。」
このように、「意向の形成プロセス」→「絞り込みの理由」→「最終決定の理由」が一本の線で繋がっている証跡を標準化する必要があります。
システム導入にあたって注意すべきこと
前述した3つのステップ(商品の客観的比較、意向形成のプロセス、詳細な証跡の記録)を、全募集人が紙やExcelを用いて属人的に行うのは、実務上すでに限界を迎えています。
そのため、多くの保険代理店で「比較推奨・意向把握システム」の導入が進んでいますが、パブコメ結果を踏まえ、システム選定においては以下の点に注意が必要です。
システムロジックの透明性(歪みの排除)
システムが自動で商品を絞り込む際、その裏側にあるアルゴリズムが「代理店手数料が高い商品」や「キャンペーン中の商品」に有利に働くような設定(ロジックの歪み)になっていないか、代理店自身が検証・把握できるシステムを選ぶ必要があります。
証跡の自動連携と保管性
商談時に入力した意向把握のプロセスが、そのまま改ざん不可能な形で証跡としてクラウド上に保存・出力できる機能が必須です。
法改正へのアップデート対応
保険業法やガイドラインの解釈は日々変化します。今回の「ハ方式廃止」のように、実務ルールが変更された際に、迅速にシステム側で改修・アップデートが行われるベンダーを選定しましょう。
顧客本位の業務運営への完全シフトに向けて
今回のパブコメ結果は、保険業界全体に対して「真の顧客本位の業務運営」を強く求める金融庁からのメッセージです。
「ハ方式」の廃止は、これまでの販売スタイルを変えざるを得ない大きな転換点ですが、猶予期間(適用開始までの期間)を有効に使い、「商品整理」「トークスクリプトの改訂」「証跡管理のシステム化」の3ステップを今から着実に進めることが、これからの時代に保険代理店として生き残るための絶対条件となります。
まずは自社の取扱商品の整理と、現場の募集人のヒアリング能力(意向形成力)の強化から、早急にスタートさせましょう。

コメント